後立山(長野) 布引山(2683m)、鹿島槍ヶ岳北峰(2842m)、鹿島槍ヶ岳南峰(2889.2m) 2023年10月14日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 0:59 大谷原−−1:52 西俣出会−−3:16 高千穂平(標識)−−4:11 冷乗越(県境稜線)−−4:23 冷池山荘−−4:31 テント場−−5:14 布引山−−5:52 鹿島槍ヶ岳南峰 5:55−−6:23 鹿島槍ヶ岳北峰 6:37−−7:03 鹿島槍ヶ岳南峰 7:36−−8:01 布引山−−8:29 テント場−−8:33 冷池山荘−−8:44 冷乗越−−9:15 高千穂平(標識)−−9:48 西俣出合−−10:25 大谷原

場所長野県大町市/富山県中新川郡立山町
年月日2023年10月14日 日帰り
天候晴後曇後晴
山行種類一般登山
交通手段マイカー
駐車場大谷原に駐車場あり。今年も橋を渡った対岸の駐車場も利用可能だがそれを知らない登山者が多い
登山道の有無あり
籔の有無無し
危険個所の有無雪が付くと南峰〜北峰間は危険
山頂の展望どのピークも晴れれば大展望
GPSトラックログ
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コメント降雪から1週間後に赤岩尾根経由で鹿島槍へ。赤岩尾根上部のガレトラバース箇所が凍結していないか心配だったが、雪は無く霜も降りておらず簡単に通過できた。鹿島槍南峰まではほとんど雪は無くアイゼン不要。南峰〜北峰間はほとんど雪は消えていたが、部分的に数mほどの硬く締まった雪が数箇所で残り、下りではアイゼンが欲しいところ。私は下りで1箇所だけアイゼンを使い、登りでは使わなかった。難関の岩壁は凍っておらず雪も付いていなかった。通常の週末にしては人が少なく、下山で冷乗越までにすれ違った人数は15人前後で赤岩尾根ですれ違ったのは5人程度だった。空気の透明度は良好で日が高くなっても奥日光や尾瀬の山々が見えていたし、日の出には飯豊(距離約230km)、吾妻連峰(距離約260km!)が見えていた


鹿島槍ヶ岳南峰から見た飯豊。この日の空気の透明度は非常に良好で、妙高山が無ければおそらく朝日連峰まで見えていただろう


大谷原左岸側駐車場 西俣出合の堰堤トンネル
高千穂平の標識(標高2045m) 大町市街地の光
ガレ場トラバースに雪無し 冷乗越(県境稜線)
富山県側の町明かり 冷池山荘
テント場。少なくとも2張あった 安曇野、松本市街地の明かり
布引山直下で新雪登場 布引山
午前5時15分の東の空 標高2700m付近
標高2820m付近 午前5時51分に四阿山山頂から日の出
鹿島槍ヶ岳山頂(南峰) 北峰へとつながる吊尾根にはほぼ雪無し
鹿島槍ヶ岳南峰から見た飯豊。距離は約230km
鹿島槍ヶ岳南峰から見た吾妻連峰。距離は約260kmで過去最高
鹿島槍ヶ岳南峰から見た守門岳〜越後駒ヶ岳(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳南峰から見た越後駒ヶ岳〜平ヶ岳(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳南峰から見た苗場山〜袈裟丸山(クリックで拡大)
ここだけアイゼン装着 岩壁帯には雪、氷なし
安全地帯に着地 でもまだ部分的に雪がある
北峰分岐から見た南峰 キレット方面への縦走路
北峰に向かう 鹿島槍ヶ岳北峰
鹿島槍ヶ岳北峰から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳北峰から見た東側の山並み(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳北峰から見た南アルプス
鹿島槍ヶ岳北峰から見た奥秩父、八ヶ岳、富士山
鹿島槍ヶ岳北峰から見た北信の山々
鹿島槍ヶ岳北峰から見たカクネ里氷河。残念ながらほぼ消滅 鹿島槍ヶ岳北峰から見た南峰
キレット方面へ縦走に向かう男性 南峰の岩壁帯
南峰直下 鹿島槍ヶ岳南峰山頂
鹿島槍ヶ岳南峰から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳南峰から見た北信の山々
鹿島槍ヶ岳南峰から見た中越〜尾瀬、奥日光の山々(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳南峰から見た奥日光の山々
鹿島槍ヶ岳南峰から見た八ヶ岳
鹿島槍ヶ岳南峰から見た奥武蔵、奥多摩の山々
鹿島槍ヶ岳南峰から見た常念山脈、槍穂
鹿島槍ヶ岳南峰から見た立山、剱岳 鹿島槍ヶ岳南峰から見た薬師岳
鹿島槍ヶ岳南峰から見た日本海 鹿島槍ヶ岳南峰から見たウドノ頭、滝倉山、駒ヶ岳
鹿島槍ヶ岳南峰から見た後立山北部 鹿島槍ヶ岳南峰から見た尾瀬の山
鹿島槍ヶ岳南峰から見た爺ヶ岳。雪はすっかり消えていた 鹿島槍ヶ岳南峰から見た針ノ木岳
鹿島槍ヶ岳南峰から見た富士山 鹿島槍ヶ岳南峰から見た大谷原
下山開始 標高2740m付近
布引山から見た鹿島槍ヶ岳 布引山から見た爺ヶ岳
布引山から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
紅葉せず枯れたダケカンバ 唐松は紅葉し始め
まだミヤマキンバイの花が残っていた チングルマの紅葉は終わりに近い
帰りのテント場 改装工事のため冷池山荘の宿泊は終了
冷乗越への登り返し 冷乗越
冷乗越から見た西〜北〜東の展望
上部のガレ 下部のガレ
ナナカマドの紅葉。でも葉が半分枯れて鮮やかさに欠ける 高千穂平を見下ろす
北股本谷大滝 赤岩尾根上部。ガレのトラバースが見える
高千穂平(標識)から見た鹿島槍ヶ岳
高千穂平(標識) 西俣出合の堰堤。落葉した時期でないと見えない
林道終点 林道終点のコゴメグサはまだ咲いていた!
林道周辺も紅葉し始めていた ゲート
大谷原左岸側駐車場 大谷原右岸側駐車場
大谷原右岸側駐車場から見た鹿島槍ヶ岳


 先週の3連休は天気が崩れる前に蝶ヶ岳、爺ヶ岳と2日連続で登った。爺ヶ岳は降雪直後で吹き溜まりでは20cmくらい積もっていて、鹿島槍は真っ白くなっていた。今週の平日は概ね好天が続いたので山の雪もかなり溶け、金曜夕方に長野市内から見た鹿島槍には白いものが全く見えなくなっていた。もちろん北斜面には雪が残っているだろうが、南峰までの登山道は概ね南向きなので雪は消えただろう。ということで今週は鹿島槍に決定した。

 金曜日に鹿島槍の最新記録をネットで見たらアイゼン不要とのことだった。しかし北峰まで登った記録が無く、危険地帯の岩壁帯の雪がどうなっているのか不明だった。念のためにアイゼンは持っていくが、岩が凍っていた場合は歯が立たないので北峰に登れない可能性はある。まあ、雪が降った翌週だからそれも仕方ない。アイゼンは赤岩尾根上部のガレのトラバース対策も兼ねていて、あそこが凍ったり雪に覆われているとアイゼンが必要である。まだピッケルが使えるほど雪があるとは思えないのでピッケルは準備しなかった。

 金曜夜の大谷原駐車場には少なくとも1台の車があった。金曜日は好天であり土曜も好天予報なので、金曜に入山した人がいても不思議ではない。左岸側駐車場に車はゼロなのはいつもどおりで、満天の星空で明日も好天が期待できる。酒を飲んで寝たが先週よりは気温は高めで薄着のままでも快眠できた。

 翌朝は午前0時半前に起床。山頂に日の出の時刻≒午前6時に到着するため出発は午前1時とした。夏場よりも気温が下がっているので少しだけ飯を温めてから食う。準備完了で予定通り1時に出発、未だ満天の星空のままだ。予報では標高3000mの気温は+1℃、風は弱く1m/sとのこと。今の下界の気温は+10℃前後だろうか。今は寒いが晴れて日中は気温が上がると予想されるため、下山時は半ズボンに履き替えることも想定してザックに入れておく。ダウンジャケットと違ってかさばらないし軽いのがいい。

 林道歩きを終えて赤岩尾根に取り付く。先週の2日連続山行の疲労が若干残っているようで少し足が重いが、気温は低いので汗をかかない分だけ体が動く。まあ、いつもと同じで急ぐ理由はないのでいつものペースで淡々と登り続ける。長野県内は霜注意報が出ているので登山道の岩に霜が降りてツルツルかと思いきや、岩は乾燥してグリップが良く効いて歩きやすかった。山頂までの間で岩に霜が降りた箇所は無かったが、土に霜柱ができた場所はあり、帰りは霜が溶けて泥沼になっていた。

 高千穂平の標識がある平坦地で樹林が開けて大町や松本、長野の夜景が広がる。どうやら盆地を覆う雲海は出ていないようだ。これは秋の乾燥した空気に覆われているからだろう。鹿島槍の稜線は星空をバックにシルエットで見えていてガスはかかっていない。これなら展望も期待できるだろう。

 赤岩尾根上部で登山道にはみ出た笹の葉はほとんど乾いていて足が濡れなかったのはいいことだ。葉に霜が降りてもいい気温なのに降りていないのは、東向きの風が少しあるからだろうか。東向きの風とは珍しいが、これは西から低気圧が接近中だからだろう。もう九州では雨で、この界隈でも日付が変わる頃には雨が降り始める予報だ。

 ガレを横断して冷乗越に到着。種池山荘の光は見えるが冷池山荘の光は無し。改装工事中で既に今年の宿泊営業を終えているからであろう。通常なら剣沢小屋の光も見えるのだが真っ暗。雪が降ってもう今年の営業は終わったのだろうか。まだ爺ヶ岳付近に登山者の光は見えないが、時刻は午前4時を回っていて、鹿島槍を目指してそろそろ種池山荘を出発する登山者がいてもいい頃だ。

 ここまで半袖と軍手で登ってきたがさすがに寒くなってきたので、一旦樹林帯に下ったところで防寒装備を装着。軍手の上には防寒テムレス、上着の代わりにウィンドブレーカ。軍手+防寒テムレスは実際に使ってみると指の締め付けが強くて血流を妨げて指が冷えるので、軍手は止めて使い捨てカイロを防寒テムレスの中に仕込んで快適になった。このカイロは先週使ったものだが、下山途中で密封できるビニール袋に入れておいた。これにより空気(酸素)を遮断してカイロの発熱反応を止めるので、使いかけのまま保存が可能で便利だ。密封と言っても簡易的なものなので完璧ではなく、あまり長期間は持たないと思うが1週間程度なら問題ない。

 冷池山荘は改修工事で宿泊は終了しているが売店と水の販売はやっていると張り紙が出ていた。でも小屋はもう冬篭りの準備が始まっていて、玄関先の軒を支える支柱が設置してあった。テント場には少なくとも2張あり。テント場はまだ営業しているようだがもうかなり寒いだろう。テント場から見た山頂方向の稜線には光は見えず、どうやら今日は私が先頭らしい。冷池山荘の宿泊者がいないからなぁ。

 登山道が稜線東側に移ると日中は登山道は湿っているようで今は地面は硬く凍っていた。いつもなら登山道が稜線西側に移って森林限界を超えると風が当たって寒くなるのだが、今日は東風なので逆に風が無くなって妙な感じだ。布引山への登りにかかって背後が開けると2つの光が見え、一つは爺ヶ岳北峰付近で、もう一つはおそらく赤岩尾根と思われた。赤岩尾根で私以外にこんな早い時刻に登ってくる人がいるとはちょっと驚き。布引山の登りではハイマツの陰に僅かに雪が残っていた。

 布引山に到着すると周囲は徐々に明るくなってきたがまだライトが必要な明るさだった。しかし東の空は赤く焼け出して志賀高原の山々のシルエットがきれいに見えていた。その中には奥日光の日光白根〜男体山にかけての山並みと、尾瀬の燧ヶ岳と至仏山も見えていたが、これは志賀高原の各ピークの並びを覚えていないと分離不可能な芸当だ。その左には越後駒ヶ岳から毛猛山、浅草岳も見えていた。もっと高度を上げればさらに北側が見えるはずで、この見え方なら飯豊や朝日連峰が見えるかもしれない。

 鹿島槍への登りの途中でLEDヘッドライトが電池切れになったが、気温が下がった影響かいつもより持ちが短かった。でも周囲はもうライト不要な明るさになっていたので問題なし。山頂までの本格的な登りでも登山道にはほぼ雪は残っていなかった。先週末の積雪はそれほど多くなかったはずなので、数日も日が当たれば溶けてしまうのだろう。

 山頂まであと1分くらいという山頂直下で、四阿山山頂から太陽が出てきた。今日は東の空の低い位置には雲は皆無ですっきりした日の出を見られた。無人の鹿島槍山頂(南峰)に立って周囲の山々の写真撮影。北峰へ続く吊尾根は予想以上に雪が無く、ほとんど無いと言っていいほど。これなら北峰まで行けるかもしれないと挑戦してみることにした。もしヤバい箇所があったら無理せずに引き返す予定だ。北峰は今年ももう何回も登っているからこだわる必要は無い。

 その前に山頂から周囲の展望写真撮影。特に東の山並みをターゲットとしたが、これはその方向に日の出直後しか見えないほどの遠距離の山があるからだ。尾瀬の平ヶ岳、燧ヶ岳、至仏山、日光白根〜男体山にかけては非常にはっきりと見えている。越後駒ヶ岳の左側には村杉半島の山々、毛猛山、浅草岳、守門岳と続くが、これより北の山並みは残念ながら高妻山でブロックされて見えない。しかしさらに左に視界を振って乙妻山〜妙高山間の鞍部に山並みが見えている。その形状から飯豊の可能性が高かったが自信は無く、帰宅後にカシミールで確認したら間違いなく飯豊であった。直線距離は約230kmであり記録的な遠望と言えよう。今回の空気の透明度は前回の白馬岳よりも確実に良かったので、おそらく朝日連峰も見えたと思うが、残念ながら鹿島槍からでは妙高山の裏側に隠れて見ることはできない。残念!

 現場では気付かなかったが、毛猛山と浅草岳の間に山並みが見えていた。中越地方でこの2つの山より高い山は思い浮かばず、さらに遠い福島県内となると全く予想が付かなかった。帰宅後にカシミールでシミュレーションすると西吾妻山から中吾妻山にかけての稜線で、直線距離は約260kmもあった(最高記録!)。また、会津磐梯山の山頂のみが僅かに見えていることも判明した。ただし磐梯山は吾妻連峰から2,30km近い位置にある。

 これだけ遠くまで見えたのは過去最高記録で、私の今後の人生も含めて今回が最高記録になっても不思議ではない。なお、限界までの遠望を見たい場合に重要な条件がある。まず最初は必ず日の出前に山頂に到着すること。過去の経験からして200km近い遠望は日の出前後の短い時間しか見えたことはない。次に空気が乾燥した季節、天気の時に登ること。湿気が多い夏や、春秋でも湿った南風が入る気圧配置の時は望み薄である。大陸性の高気圧に覆われて弱い北西の乾いた風が入った状態がベストであろう。おそらく無風よりも風があった方が空気の淀みがなく遠望が利くと思われる。

 記録的遠望を堪能してから北峰に向かう。出だしは雪無しなのでノーアイゼンのまま。下っていくと数mだけ雪が残っている箇所があり、雪は固く締まってツルツルで傾斜があると危険で上に乗ることができないので、登山道脇の雪が無い場所や岩の上に足を置いて雪を避けつつ下っていく。しかし岩壁帯直上の傾斜がある数mの雪は回避が難しく、安全のため軽アイゼン装着。そのまま岩壁帯を下ったが氷は付いておらず雪も無かったので、最も危険な岩壁帯にはアイゼンは不要であった。安全地帯に下りてからアイゼンを脱いだ。

 しかしこの後も断続的に数mの雪が登場。しかしその間は岩場の連続でアイゼンを付けたままでは逆に滑るため、雪がある場所でもアイゼンは付けないまま登山道から若干外れた雪が無い場所を選んでどうにか歩き通した。鞍部から北峰の登りにかかれば、雪があっても下りより格段に滑りにくくなる。

 キレットに向かう縦走路と離れて北峰へ向かう。ここにも断続的に短距離の雪が残るが、雪の無い場所をどうにか選んでアイゼン無しで登っていく。登山道が尾根直上に乗れば雪が消えて鹿島槍北峰山頂に到着。

 当然ながらここも無人。先週の爺ヶ岳の山頂標識には盛大なエビの尻尾が付いていたが今日は無しで無雪期の光景だ。ここから見る鹿島槍南峰もほぼ雪は見えない。南向きの稜線になる影響もあり、五竜岳の稜線にも雪は無かった。でも天気はこれから下り坂で明日は低気圧の接近で雨だが、これが通過するとまた冬型の気圧配置になってこの界隈は雪になるのだろう。昨年は11月末まで冬型の気圧配置は現れなかったのとは対照的だ。

 鹿島槍北峰の東直下にはカクネ里氷河があるが、てっぺんから見下ろしても雪はほぼ消えてしまっていて、おそらく氷河は消失してしまったと思われる。山頂からでは尾根に邪魔されて谷の全部が見えるわけではないので残っている可能性が無いわけではないが、そこは傾斜がきつい区間である。一般的に傾斜がきつい谷は積雪量が少なく、氷河まで成長するのは難しいだろう。特にカクネ里は標高がそれほど高くないし。温暖化が進行すると国内のみならず海外の山岳氷河もどんどん後退、消失してしまうだろう。

 風を避けながら防寒装備にフリースの長袖を追加して休憩。ここまで出発から約5時間半かかっているが、吊尾根に雪が無ければもっと速かっただろう。それでも北峰まで来られたのだからラッキーで、次に来るときは登れるかどうか分からない。それは積雪状況次第である。

 腹が減ったのでパンを食ってから南峰に向けて登り返し。今度は大半の雪が登りになるので断然歩きやすい。この状況で他に北峰方面に人がやってくるかと思ったら意外とすれ違った。トップバッターはキレット小屋方面に縦走に向かう男性でチェーンアイゼンを付けていた。この雪質ならぴったりだろう。問題はイヤらしい場所で雪が残っていないかどうかだが、ここからどんどん高度が落ちていくので雪がある確率も下がってくるはずだ。

 鞍部からの登り返しでは計4人とすれ違った。この岩尾根でストックを持った人がいたが大丈夫だろうか。私もノーアイゼンだったが4人全員がノーアイゼンだった。

 鹿島槍南峰に戻ると単独男性が1人いるだけで静かだった。この男性は北峰に向かうことなく冷池方面へ下っていった。稜線を見ても人の姿は判別できず、通常の週末より登山者は少ないようだ。正確にカウントしたわけではないが、冷乗越までですれ違ったのは15人前後だったと思う。この他に冷池山荘付近で休んでいた人が4,5人いた。

 北峰では約15分しか休憩しなかったので南峰でも休憩(約30分)。休憩中はずっと無人のままだったのは今シーズン初めてで、これも登山者が少ない証拠だろう。日が徐々に高くなって既に飯豊や吾妻連峰は見えなくなっていたが、尾瀬や奥日光はまだまだ見えている。これが夏山シーズンならこれらの山々も見なくなっていただろう。奥秩父、八ヶ岳、南アルプスも良く見えているが、今回は両神山周辺に見える山が格別に良く見えていた。特に両神山の左側に位置する武甲山や大持山、小持山は初めて見ることができた。展望シミュレーションではいつも両神山の左に見えることになっているが、実際には雲海に埋もれて見えたことがなかったのだ。今の武甲山山頂がどうなっているのか知らないが、もし立入が可能で樹林が無ければ後立山〜常念山脈や裏銀座が良く見えているはずだ。

 休憩を終えて下山開始。紅葉の状況を確認しながら歩いたが、やはり今年はダケカンバの紅葉は大外れで、中腹でもきれいな黄色は見られなかった。稜線から少し下った斜面のダケカンバは遠目には既に落葉して丸裸になっているように見えたが、近くで見るとまだ葉が付いていたが黄色く色付かずに枯れて茶色く変色していた。これは稜線上のダケカンバと全く同じ状況だった。ミネカエデやナナカマドは色付いてはいるが、特にナナカマドは半分くらいの木で鮮やかな赤に紅葉せず、茶色く枯れた部分が混じっていた。今年の紅葉は大外れである。稜線に生えた天然の唐松は紅葉が始まったばかりで、チングルマの葉は赤くなったもの、既に茶色に枯れたものが混じり合っていた。その中でまだミヤマキンバイが花を付けていたが、もうこれが最後だろう。

 テント場は1張あったが、今日登ってきたのではなく昨夜からの残りだろう。冷池山荘周辺では2パーティー計5人くらいがいたが、人数が多い方のパーティーは種池方面への下山組だった。

 冷乗越へのきつい登り返しで立山、劔方面の展望と分かれて赤岩尾根へ入る。前回もぞうだったが赤岩尾根上部から赤岩尾根を見下ろすと、背の高いダケカンバは枯れた茶色の葉が付いていた。下りに稜線から斜面の紅葉具合を見ながら歩いたが、一部は紅葉しているが明らかに鮮やかさに欠ける色だった。

 朝は上空に雲があったが徐々に薄くなって日差しが強くなってきたため、赤岩尾根上部で登山靴を脱いで半ズボンに履き替えた。これでだいぶ体感的に涼しくなったがまだ不足で、濡れタオルを持ってくればよかったと後悔。扇をフル回転させ強制風冷で体を冷やした。とは言え真夏とは違って気温も湿度も低く、樹林帯の日影に入ると快適であった。

 赤岩尾根に入ってからすれ違った登りの登山者数は約5名で、やはり通常の週末より少なかった。おそらく先週の降雪の影響を心配して後立山を回避した人はそれなりにいるのだろう。

 傾斜が最もきつい区間では10分間で標高差約240mを下ったので登りの約3倍の速度。これは傾斜がきつい赤岩尾根でしか実現できない数値だ。傾斜が緩んで西俣出合の堰堤を潜って林道終点に出たが、今回は汗は少ししかかかなかったので水浴びは無しでそのまま林道歩き。その前に林道終点でまだコゴメグサの花が残っていないか探したらまだあった! ここのコゴメグサは本当に長く粘っていて約3ヵ月花を付けて続けている変わり種である。

 林道ではすれ違う人はなく大谷原駐車場に到着。軽トラが1台増えていたが荷台の荷物からして登山者ではないようだ。右岸側の駐車場には10台弱の車でまだ余裕があった。ここからは鹿島槍山頂部が良く見えていて、全く雲が絡んでいなくて快晴になっていた。

 

山域別2000m峰リスト

 

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